旅の途中で

190505離島ワーホリ滞在記

離島ワーホリ最終日。

見慣れてきつつあった港の景色の中でお仕事ができるのも今日で最後。

離島ワーホリでの日記が最終日の今日は港を舞台にこの島で感じたことを書きたい。

昨日は休日だった。天気も良く風もない日。

一日ひとりで海士町を観光しようと歩いていた時、突然一台の車が止まって声をかけられた。

小さい頃に誰もが教わったはずの「知らない人についていってはいけません」というセリフ。

ここ海士町で必ずしも当てはまるわけではないことは経験でも聞いた話としてでも知っていた。

車のドアが開いて声がした。

運転していたのは前の日に仕事終わりに釣りをしていた際、見知らぬ私に釣り方を親切に教えてくれた方だった。

「今から時間があれば乗りますか。観光でもしましょう」

この方(Yさん)は港の近くに住んでいて、毎日のように港で釣りをしながら、釣りをしている家族連れに釣り方を教えたり、自分の釣った魚を干物にしてその家族連れにプレゼントしたりしている。

「なんでここまで良くして下さるのだろう」と思ってしまうほど、どんな人に対してもいつでも笑顔で気持ちよく、釣り方を教えてくれるだけでなく、優しさと思い出までもプレゼントしてくれる方だ。

「車に乗って観光する前にちょっとさっきの家族のお見送りだけさせてください」と言うとYさんはフェリー乗り場に向かい、先ほど釣りを教えていたという家族に手紙と手作りのアジの干物を渡しながら、雑談をしたり写真を撮ったりしてフェリーが港を離れるまでずっと見送っていた。

さっき出会ったばかりの旅行者をお見送りしようと手紙まで書いてフェリー乗り場まで向かう。

見送られた家族は感動して目に涙を浮かべていた。

フェリーが港を出る際にはなむけとして紙テープ投げが行われる。(隠岐では環境に配慮して実際には投げませんが)

毎日ここで働いているのにもかかわらず、ここにきて初めて私はしっかりとフェリーのお見送りをした。

私に至っては全く知らない家族を見送る時間であったのに、なぜかとても感動してしまった。

自分がここを離れるときはどうなってしまうんだろう、と考えてしまうほどだった。

フェリー乗り場。

フェリーが港を離れる直前、フェリーの上からは「忘れないでねー」、そして港からは「絶対戻って来てねー」。

こんな子ども同士の声が聞こえる。

港ではこのようなやり取りが毎日行われているのだろう。

うれしい人、悲しい人、不安な人、寂しい人…。

いろいろな出会いがあって、別れがあって、この港はそれを全て見てきているのだと思うと、これまで「職場」であった港が、なぜかもっと離れがたい場所に思えてくる。

先ほどの家族を乗せたフェリーが遠ざかっていく。

見送りを終えると「本当に良かった、あんなに喜んでくれたらこんなにうれしいことはないよ、悪いくらいでね」と言いながらYさんは車に戻った。

予想外にも感動していた私はお見送りに立ち会えたことを心からうれしく思っていたのにもかかわらず、Yさんは私を見送りに付き合わせてしまったことを申し訳なさそうにして、「行きたいところどこにでも行きましょう」と車のドアを開けてくれた。

その後は車内で、たくさんお話をしながら海士町の観光地をいくつもまわった。

海士町がどんどん離れがたい場所になっていく。

さまざまなの人の想いや物語がつまった港と島。

明日には私もこの港から見送られる側になる。

短い滞在であったのにこの島がまた「行きたい」ではなく「戻ってきたい」場所になった。

きっとまた戻ってきたいと思える場所ができた離島ワーホリの10日間であった。



ABOUT ME
花輪 千穂
大学3年生。大学では「学び」や「地域」というワードを軸に現在の社会問題を幅広く扱うゼミに所属している。生まれも育ちも東京で「離島」という響きに惹かれて離島ワーホリに参加。旅行と都内の散歩が趣味。