CITY

第31回あいうえお色日記

「まつばいろ」

みかん狩りを手伝わせていただいたとき、歩いた道。
視界が深緑色になり、頭上から淡い光が注いでいた。

見覚えがある、と思った。
幼い頃、祖父に連れて行ってもらった公園の駐車場が、ちょうどこんなかんじだった。

はてしなく森が続くようで、薄暗い夕暮れ時は怖かった。
車まで、祖父の手をぎゅっと握って歩いた。

わたしをたっぷり可愛がり、甘やかしてくれた祖父は、4年前に亡くなった。

祖父はわたしがどの大学に入ったかを知らないし、
成人式の振り袖姿を見ていない。
もう車を運転できることも知らないし、
就職先が決まったことも知らない。

時間に余裕ができたからと離島にひとりで行ったなんて、夢にも思わないかもしれない。

いや、わたしの性格を知る祖父なら、さもありなん、と微笑むのかな。

自然のしずけさに囲まれたとき、わたしはよく祖父のことを思い出す。

祖父はお酒が、とくにウイスキーが、好きだった。
ウイスキーはわたしもようやく、美味しく飲めるようになった。

ちびちび飲みながら、
島でどんなことを見聞きしたか、考えたか、話したかったなと思う。

どんな顔をしただろう。
なんて言っただろう。
喜んだだろうか、心配しただろうか。

祖父が生きていたら、いまのわたしにどう反応しただろう。

答えはないけれど、
誇らしげな顔で笑ってくれたんじゃないかと思う。

いつだってわたしに甘い祖父は、
きっと、何でも、応援してくれたにちがいないのだ。

思い込みかもしれない。
でも、それだけでわたしは強くなれた。

思い浮かべるだけで背中を押してくれるような人、場所、思い出は、たくさんある。

海士での日々にも、もちろんある。
楽しかったなぁ、恋しいなぁ、は原動力になる。そう実感する。

自分を強くするもとを、こうして、これからも蓄えてゆく。

ABOUT ME
中村祐理子
2018年11月、ワーホリで海士町に1ヶ月間滞在しました。そのときが初の離島暮らし。普段は埼玉で実家暮らしをしており、島や地方に所縁があるわけではありませんが、ワーホリをきっかけに興味を持ちました。 「あいうえお色日記」と「しりとり交換日記」を書いています。 2019年春から社会人です。