CITY

第28回あいうえお色日記

「ふじむらさきいろ」

西原邸の玄関にある。蝶の翅なのだろうか。
光の加減でいつ見ても違う表情を見せるので、好きだった。

西原邸はワーホリ生が来ると男子寮になる。
何枚もある座布団、積み重なった食器、広いテーブル。
わたしは時期外れにひとりで来たけれど、夏は多くの学生でにぎやかだったらしい。
その時期にわたしも来ていたら、どうだっただろう。
きっと島はまったく違って見えただろうし、関わった人たちにも、わたしはまったく違うように映ったと思う。


ものごとが身体や心にすっと入ってくるタイミングがある。
いまいちピンとこなかった理屈があるときストンと腑に落ちたり、何度も見たはずの景色が急に沁みたり、ありふれた言葉が、言う人によって妙に響いたり。

わたしも、あの時期に、ひとりで、海士に行ってよかったと思う。
すっと入ってきて、程よい具合でいまも残っている。

まだどこか夏を残したような明るい秋のはじまりから、もの悲しい、少し寂しくなる冬のはじまりまで。

まわりの環境も、自分の状態も、ちょうどよかった。
振り返ったときいいタイミングだったと思えるように、何事もひとつひとつ大事に、重ねてゆけたらと思う。

ABOUT ME
中村祐理子
2018年11月、ワーホリで海士町に1ヶ月間滞在しました。そのときが初の離島暮らし。普段は埼玉で実家暮らしをしており、島や地方に所縁があるわけではありませんが、ワーホリをきっかけに興味を持ちました。 「あいうえお色日記」と「しりとり交換日記」を書いています。 2019年春から社会人です。